1.絶対臥褥期 (4〜7日)
この期間(1週間程度)は食事、トイレ以外は終日寝ていることを行います。この時期には症状や不安な感情から逃げずに、正面から向かい合う事になります。この時期には苦痛はありますが、逃げ回っていても不安は強くなるばかりです。この時期には、不安な感情と正面から向かい合うことで不安がいつしか軽くなっているという体験をすることが最も重要なことになります。
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2.作業の時期(2〜4週間)
絶対臥褥が終了した後に、畑作業や花壇の世話などの日課をします。また、病棟で行われる日課にも積極的に参加してもらいます。この時期の目標は症状や不安な感情をあるがままに耐えて作業に打込むことです。神経症では症状や不安な感情がなくなれば行動できると考えがちですが、このような考え方は症状や不安な感情に対するこだわりを強くするばかりで、不安な気分を理由に行動しない癖がついてしまいます。
人間の自然な姿として、症状にこだわることと普通に行動することのふたつを同時にはできません。下の図のように、行動することで症状や不安な感情へのこだわりを弱め、取り去るのが森田療法の考え方であり、行動を通して得られた体験から発想を転換し、今までとは違う考え方を身につけます。
作業の時期の課題
作業の時期には、以下のような課題を順番にクリアしていくことで、行動を通して得られた体験から発想を転換し、今までとは違う考え方を身につけます。はじめは納得ができなかったり、こだわりを持ちながら取り組むことに違和感を感じがちですが、行動を続けていけば、課題は順番にクリアできていきます。
1)症状や不安があっても作業に従事する習慣を身につける
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2)症状や不安があっても作業に没頭できることを経験する
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3)作業に没頭することで、不安や症状を意識しない体験をする
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4)体験を基にして、どのようにして悪循環に陥ってしまうかを自覚する
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5)発想を転換し、悪循環に陥らない考え方を身につける
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3.生活訓練の時期
作業の時期に、作業に打込み行動することで症状や不安な感情へのこだわりが少なくなることを体験を通して学んだ後に生活訓練の時期に入ります。この時期には、症状や不安な感情は入院した時に比べれば軽くなっていますが、完全になくなっているわけではありません。このため、この時期に症状や不安への対処法をより強固なものにしておくことが、退院後の楽しく建設的な人生をもたらします。また、神経症では症状や不安を理由に、現実的にやるべきことを回避してしまうことが習慣になっている場合があります。従って、治療の仕上げとしてそれまで避けていた現実の問題に取り組むことが重要なのです。
生活訓練の時期の課題
生活訓練の時期には、以下のような課題を順番にクリアしていくことで、健康人らしく生活する態度を身につけていきます。このように、健康人らしく生活する態度を身につけることは、体験を通して学んだ症状や不安への対処法をより強固なものにするという意味があります。また、先輩の人達に助言を受けたことや自分が体験を通して学んできたことを、新しく森田療法を始めた人達に助言をするというリーダーとしての役割も求められます。これは、他の人に助言し説明することで、自分自身の森田療法の理解をより深めるという意味があります。
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4.日記指導
入院時から毎日、日記をつけて提出してもらいます。この日記は担当医が読み、翌日に評を加えて返却します。日記の内容は特に制限しませんが、森田療法の理解を深めることが目的なので、体験を通して症状や不安への対処法を学ぶこと、精神交互作用という悪循環に陥りやすい間違った発想や考え方を修正することに焦点があてられます。
ちなみに森田療法は入院しなければいけませんが、外来森田療法というのもあり、森田療法的アプローチとよばれます。おもに森田療法の一般書を読む読書療法と、日記によって治療していきます。 |