精神疾患の診断基準で、世界的に有名なものとしては、DSM−WとICD−10の二つがあります。それぞれについて紹介したいと思います。

DSM−W
 
アメリカ精神医学会によって作られた診断基準。DSMは Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (精神科診断統計マニュアル)の略です。現在は第4版です。
 これが最も世界的に有名で権威のある診断基準です。DSMの第1版は第二次世界大戦中に徴兵検査のために生まれたそうですが、1980年に出た第3版以降、世界的に有名な診断基準となりました。その後1987年に第3版改訂版(DSM−V−R)、1994年に第4版が発表され、今に至ります。
 DSM(V以降)の大きな特徴は、「操作主義」と言われるものです。つまり、診断する人の主観によって診断が左右されるのでなく、誰が診断しても同じ診断名に至る、客観的な診断基準だということです。
 また、もう一つの大きな特徴は、分類にあたっては病気の原因を問わないということです。つまり、病気の原因が何かということはとりあえず考えず、表面にあらわれた症状だけを見て、分類しているということです。
 このため、DSM−Wには「神経症」という言葉は出てきません。「神経症」という言葉は病気の原因を想定した言葉だからです。「神経症」に相当するものとしてDSM−Wでは、不安性障害、身体表現性障害、解離性障害、摂食障害、適応障害などの用語が使われています。

ICD−10
 ICD(国際疾病分類)はWHO(世界保健機構)によって作られている分類で、現在は第10版です。精神疾患だけでなく、あらゆる疾患を分類したもので、そのうちの一章が精神疾患にあてられています。DSMとそれほど大きな違いがあるわけではありません。
 厚生省の統計などにはこのICDの疾病分類が使われています。


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