認知療法


 認知療法とは、自分の「心のくせ」や思考のパターンを知り、それをより柔軟性の高いものに変化させていくことで、気分の改善を図ったり、社会への適応性を高める方法です。

 それぞれの人にはその人特有の
物事のとらえ方(認知のパターン)があって、それが感情のコントロールに影響を及ぼしています。例えば、いつもネガティブな考え方をしている人は、憂うつな気分に悩まされることになります。憂うつになったり、感情が不安定なため社会にうまく適応できない人のなかには、歪んだ物のとらえ方(認知の歪みをしていることが原因と考えられる場合が多くあります。

 また人は不安になったり、イライラしたり、怒ったり、緊張したりした時などには、自然に何らかの考えやイメージが頭に浮かんでくるものです(このようにある場面で
自然に浮かんでくる考えやイメージを「自動思考といいます)。これはスキーマによるもので、スキーマとは自分の過去の学習や経験に基づいた、信念や規則法則のことです。
 例えば「もし完全でなければ私は愛されない」「もしすべての人から受け入れられなければ私は価値のない人間だ」といったようなことです。スキーマは心の奥底に潜んでいて自動思考の内容を左右しています。
 
ですから、自分の「認知の歪み」のパターン,、つまり、「心のくせ」を知り、それを修正したり、柔軟性の高いものに変化させることができれば、気分をよくしたり、自分の感情をコントロールすることに役立つはずです。

 実際に行われている方法としては、週1〜2回で一回50分程度治療面接を行います。

 内容としては

  1. 現在の問題点を整理し、取り組む順序を決める。
  2. 自動思考を同定し、思考、感情、行動、そして三者の相互作用を理解する。
  3. 認知のゆがみを認識し、それについて検討する。
  4. 認知のゆがみをより適応的な解釈にかえ、それを実行し問題により適応的、効果的に対処できる方法を身につける。また認知のゆがみの基礎にあるスキーマを同定し修正する。
  5. 最終的にそれまでの治療経過をまとめ、今後の困難な状況を予測し対処法を検討し、再発を予防する。

これは病院で行われている方法ですが、自分でも何か問題がおきたときにこれらのことを書きとめて、自分で認知のゆがみや、スキーマを考えてみるのもいい方法だと思います。

  1. いつ、どんなことが起こったか
  2. その時の状況
  3. その時の感情
  4. その時心に浮かんだ考え(自動思考)
  5. そしてその考えに対する合理的な考え

を、記述してみてください。

具体的には

日付 状況 感情 自動思考 合理的な考え
○月○日○時 休日の今日は、ベッドで一日中ゴロゴロしていた 憂うつ 自己嫌悪 自分は、ダメな人間だ。 何もしていないときは、確かに憂うつな気分になることもある。しかし、平日は仕事もこなしているし、ダメ人間というわけではない。
一度、何かをしだしたら、そのことに興味が持てるだろう。そうしたら、次第に調子が上向いて、行動範囲も広がるだろう。

 これを寝る前など、自分でつけるようにしてください。
 これにより
自分自身の気がつかなかった部分を知ることができます。


 あと日常活動の
スケジュールを作成するという方法を紹介します。下に示した例のように、スケジュール表に、買い物、読書、散歩などという簡単な言葉を書き込んでおくだけでいいのです。予定表のすべてを埋める必要はありません。

8:00 起床
10:00 散歩
17:00 買い物
21:00 読書


 これは、簡単ですが効果的な方法です。なぜ効果的かといいますと、あらかじめスケジュール表を作っておくことで、その時になってどうしようかと迷ったり、嫌になってやめてしまったりといったことを防ぐことができるからです。実際に活動すると、たいていは気分を高めるような変化が起こります。しかし、何もしないでいると、ネガティブなことばかりを考えてしまうので、一層、ゆううつになってしまいます。



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